信州の塩尻、桔梗ヶ原と呼ばれる土地に、はなという女の子が住んでいた。はなは家族思いの優しい女の子で、曾祖母である千代のことを特に慕っていた。 ある日、はなの村に“夏川玄左衛門一座”という旅芸人がやってくる。村人は大喝採で彼らを迎え、祝儀をはずむ。興行を終え、祝儀の中身を確認していた彼らのリーダーは、好物の“おやき”を見つけたことで興奮し、キツネの姿になってしまう。実は彼らの正體は、辺り一帯のキツネを束ねる、玄蕃之丞(げんばのじょう)とその仲間、お夏と新左衛門だったのだ。偶然その場に居合わせたはなに正體がばれたと思い、焦った玄蕃之丞は、「正體を秘密にしてもらう代わりに一つだけ願いを聞いてやる」と提案するのだが……