彼女には忘れられない人がいた。 見合いをすることになった薫子。しかし、彼女には忘れられない人がいた。 幼い頃、秩父で出會った名前も知らない少年……。 一緒に歩いた秩父神社、羊山公園の芝桜、長瀞の渓流、三峰神社から見た雲海は、 かけがえのない思い出となり、今も薫子の胸を焦がしていた。 「秩父に行けば、また會えるかもしれない……」 淡い期待と遠い日の思い出が、彼女を秩父へと走らせる。