理不盡な解雇により職を失った青年・直井玲鬥は、追い詰められた末の過ちで逮捕される。運に身を委ね、將來を思い描くことも、人生の選択を自ら決める意志もなかった。そんな彼に運命を変える出會いが訪れる。 依頼人の指示に従うなら、釈放する――突如現れそう告げる弁護士の條件を呑んだ玲鬥の前に現れたのは柳澤千舟。大企業・柳澤グループの発展に大きく貢獻してきた人物であり、亡き母の腹違いの姉だという。「あなたに、命じたいことがあります」それは、月郷神社に佇む<クスノキの番人>になることだった。 戸惑いながらも番人となった玲鬥は、さまざまな事情で境內を訪れる人々と出會う。クスノキに定期的に足を運び続ける男・佐治壽明。その娘で父の行動を不審に思う女子大生・佐治優美。家業の継承に葛藤する青年・大場壯貴、彼らや千舟と関わるうちに、玲鬥の世界は、少しずつ色を帯びていく。 ――だが、玲鬥はまだ知らなかった。クスノキが持つ<本當の力>を。 やがてその謎は、玲鬥の人生をも巻き込みながら、彼を思いもよらぬ真実へと導いていく。